2024年5月27日月曜日

「使用済み核燃料中間貯蔵施設に関して専門家を含めた有識者会議の設置を求める陳情」を提出しました。

 「上関原発どうするの?~瀬戸内の自然を守るために~(略称:上関どうするネット)は、2024月5月18日付で、上関町議会議長に宛てて

「使用済み核燃料中間貯蔵施設に関して
専門家を含めた有識者会議の設置を求める陳情」

提出し、受理されました。本文の PDF版は
https://drive.google.com/file/d/1eWbn6J7d7wqU7Ps-SE2RFiYHmyvJunwn/view
よりダウンロードいただけます。画像ファイルにしたものを添付します。全7ページです。

p1

2024 年 5 月 18 日 上関町議会 議長   岩木 和美 様 所在地   東京都中野区中央2-48-4   小倉ビル 1 階 NPO 法人  原子力資料情報室内 名   称   「上関原発どうするの?~瀬戸内の自然を守るために~」 (略称:上関どうするネット) 連絡先 伴 英幸 使用済み核燃料中間貯蔵施設に関して 専門家を含めた有識者会議の設置を求める 陳情 1.     陳情の要旨 中国電力と関西電力によって使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設立地調査が上関町内にて進められておりますが、使用済み核燃料中間貯蔵施設は大量の放射性物質が一カ所に集められるため「地震の危険性」「津波の危険 性」「火山の危険性」「火災の危険性」「航空機・ミサイル落下の危険性」「避難困難の危険性」等、多くのリスクが懸念される施設です。そのため、 1)上関町での中間貯蔵施設建設の妥当性を検討するための特別委員会を議会内に設置して、外部の専門家による反対の声を聴く機会を作ってください。 2)上関町に中間貯蔵施設に関する有識者会議を設置して総合的に検討するように町長に求めてください。 2.   陳情の理由 ■地震・津波について 本年元日に能登半島で起こった地震による甚大な被害は今も続いており、自然災害の恐ろしさを改めて思い知ることとなりました。 使用済み核燃料を中間貯蔵施設で保管するとすれば、その保管期限の50年後よりも前に上関町が地震に襲われる可能性が考えられます。 ●多数の活断層 文部科学省と気象庁は「過去に繰り返し地震を起こし、将来も地震を起こすと考えられている断層を『活断層』と言います。日本の周辺には約2,000もの活断層があり、それ以外にもまだ見つかっていない活断層が多数あると言われています」と説明しています。 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/katsudansou/katsudansou_kinki.pdf

p2

●地震はいつ起きるかも 今回の能登半島の地震は、「3000~4000年間、眠っていた活断層が動いた」と言われております。 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/931800 このことは、山口県においても巨大地震がいつ起こるかわからないと想起させます。 ●南海トラフ巨大地震の被害は上関町でも起こりうる 南海トラフで発生する地震は、貴町の「地震・津波から身を守るために」情報で「上関町の最大震度は6弱が想定されます」と警告されています。 https://www.town.kaminoseki.lg.jp/wp-content/uploads/2016/09/tunami_ura.pdf 地震調査研究推進本部(本部長 文部科学大臣)は、「南海トラフでは約100~200年の間隔で蓄積されたひずみを解放する大地震が発生しており、近年では、昭和東南海地震(1944 年)、昭和南海地震(1946年)がこれに当たります。昭和東南海地震及び昭和南海地震が起きてから70年近くが経過しており、南海トラフにおける次の大地震発生の可能性が高まってきています」と説明しています。 ■避難について 志賀原発は、能登半島西側の石川県志賀町に建てられている2基の原発です。今回の地震で、原発事故があった際の「基本的な避難ルート」とされている金沢と能登半島を結ぶ自動車専用道「のと里山海道」が複数カ所で陥没し、一時全面通行止めになった とのことです。 避難計画の実効性があらためて問われる深刻な事態となっています。 伊藤環境相は、地震による道路寸断は原発事故避難時の「 検討課題」と語っているそうで す。 検討し解決済みの事柄ではなく「今後」検討を行う事柄だとは、とても地元住民に言 えることではありません。 長島と本土とは、上関大橋で一本でつながっているだけです。この橋や橋につながる道路 が通れなくなったら、避難できません。地震と津波に襲われた港から船を出して避難する こともできません。 しかも、中電の中間貯蔵施設に関する調査には、「住民が避難するルートが確保できる候 補地か否か」含まれていないと思われます。 ●能登半島地震・志賀原発 避難ルート「のと里山海道」は一時全面通行止め 避難計画は“絵空事"だった(AERA 2024.1.7) https://dot.asahi.com/articles/-/210705?page=1 原発事故があった際の「基本的な避難ルート」とされていた、金沢と能登半島を結ぶ自動 車専用道「のと里山海道」は複数カ所で陥没が確認され、一時、全面通行止めになった。 他の道路も寸断され、孤立した集落も数多く残されている

p3

●避難ルート 半島の地形が制約  (朝日新聞  2024.1.11) 志賀原発から10キロ余り。家屋の被害が残る山間部に住む60代男性は「地震対応に精いっぱい。これに原発災害が重なったら……」と不安を隠さない。志賀町の稲岡健太郎町長は9日、「改めて地震列島の中の原子力だとわかった。安全性をしっかり確認してもらいたい」と述べた。 ●地震による道路寸断、原発事故避難時の「 検討課題」  伊藤環境相(朝日新聞2024.1.9) https://digital.asahi.com/articles/ASS194SM8S19ULBH011.html 能登半島地震で各地の道路が寸断されたことについて、原子力防災を担う伊藤信太郎環境相は9日の閣議後会見で、原子力発電所事故時の避難対応での「検討課題としたい」と述べた。今回の地震では北陸電力の志賀原発(停止中)がある石川県志賀町周辺でも通行止めが起きた。全国の原発立地自治体などがつくる避難対応をまとめた地域防災計画で検証を促すべきか検討するという。 伊藤氏は、まだ地震の影響をすべて把握できているわけではないとし、検討課題を「今の時点でどの点と明確に申し上げることは困難」だと説明。避難ルートに影響がでかねない道路の寸断の想定などは「検討材料だと思う」とした。また、今回揺れた地域には、昨年末に事実上の運転禁止命令が解除され、地元同意に焦点が移っている東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)もある。今回の地震を踏まえた避難のあり 方について、事故時の避難計画をまとめている内閣府の地域原子力防災協議会の作業部会で「今回の地震のことも含めて、緊急時の検討を進めていきたい」と述べた。 ●中電の調査では避難の適格性は評価対象ではない 中国電力は、2023年8月2日付の「上関地点における使用済燃料中間貯蔵施設の設置に係る調査・検討について」との文書で、調査・検討の目的を「使用済燃料中間貯蔵施設の立地が可能かどうかを確認するとともに、具体的な計画の検討に必要なデータを取得する」としています。 https://www.energia.co.jp/ir/kaiji/pdf/kaiji_20230802.pdf この目的には中間貯蔵施設の予定地が地元住民にとって確実に避難できるところかどうかの観点は入っていないと思われます。 あくまでも中電にとって都合がいいかどうかを調査・検討するだけで、地元住民のことは視野にないと思わざるを得ません。 ■中間貯蔵施設に係るリスクについて 原子力規制委員会や青森県が青森県むつ市に建設されている使用済み核燃料中間貯蔵施設の安全性について、検討を行っています。 この二機関の検討に住民の未来を託すことができるとは思われませんが、中間貯蔵施設は単なる倉庫ではなく様々なリスクがあるため、現在立地調査中の上関町の使用済み核燃料中間貯蔵施設についても、少なくともこれらの検査項目についての検討が厳密にな

p4

されるべきだと思われます。 大きな地震で施設を損傷を負い、施設につながる港湾や道路が使えなくなった時、予め用 意された対策が実施できない、そもそも人員が確保できない可能性もあります。 更に自然災害や事故時の住民避難計画についても、具体的な検討がなされるべきと考えます。 ●青森県の安全性チェック・検討会の内容 青森県むつ市に建設されている使用済み核燃料中間貯蔵施設については、青森県が2005年に「使用済燃料中間貯蔵施設に係る安全性チェック・検討会」を設置しました。 その検討会の報告書「使用済燃料中間貯蔵施設に係る安全性について」の目次には、検討項目が次のように記載されています。「放射性物質の閉じ込め対策」「放射線しゃへい対策」「臨界防止対策」「除熱対策」「火災・ 爆発防止対策」「地震対策」「飛来物対策」「放射線管理」「平常時及び事故時評価」「 使用済燃料の輸送安全対策について」「 品質保証体制について」 https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/energy/g-richi/files/20050315_SF-CheckResult- Summary.pdf ●原子力規制委員会のリサイクル燃料貯蔵株式会社(使用済燃料貯蔵施設)関連審査会合 のやり取り(順不同) https://www.nra.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tekigousei/nuclear_facilities/S TO/committee/index.html 「地震」「津波」「火山」「地盤・地質」「キャスクの健全性」「キャスクの遮蔽機能」「外部電源の喪失」「航空機やミサイルの落下」「火災事故」「竜巻」「建屋の健全性」等について、 原子力規制委員会、原子力規制庁、研究者、事業者とでやり取りがなされています。 ■永久貯蔵にならないか 使用済み核燃料は青森県六ヶ所村にある再処理工場で全量再処理されることになってい ます。 しかしながら、その再処理工場は1993年に建設を開始したものの、30年後の今現在も竣工に至っておりません。 また、敷地内の一角にある使用済み燃料プールは、全国の原発から搬入された使用済み燃料約2900トンで埋まり、容量の99%に達しています。そのため上関町に使用済み核燃料の中間貯蔵施設ができて搬入された後の搬出先がない状態です。永久貯蔵になる可能性すらあります。 ●岩国市の福田良彦市長は、「国の核燃料サイクル政策が機能していない現状を踏まえると、中間貯蔵とはならぬ永久保存となる可能性も排除できない」と中国新聞のアンケート

p5

に対して回答しています。(中国新聞2023.10.21) https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/375934 ■山口県内自治体首長等の発言から察せられる地域からの孤立リスクについて 中国新聞の自治体首長へのアンケートでは、上関町の西町長以外に使用済み核燃料中間貯蔵施設の上関町への建設に賛成する首長は、西町長だけでした。この間山口県内の自治体首長や山口県知事から中間貯蔵施設がもたらす事態について憂慮する発言が続いております。 上関町が山口県域から孤立してしまうリスクが、強く危惧されます。 ●山口県自治体の首長のこの間の主な発言 原発計画に反対して上関町を含む周辺2市4町の自治体議員らで作る議員連盟は、上関町だけが決める問題ではない、周辺自治体の意見も聞くべきだとして、それぞれの市町へ申し入れを実施し、また、それぞれの市町議会で質問を行った。以下、市町の反応をまとめ た(同議員連盟の代表中川隆志氏の報告より)。 岩国市長:岩国市も含め地域住民の理解促進がないままに色々な手続きが進んでいくことが大きな不安を生んでいると思っている。柳井市長:上関町長には慎重さを求めた、国や電力事業者に説明を求めて徹底的な議論をしたい。 光市長:住民の声に耳を傾け安全安心の確保を念頭に注意深く見守る、これまで通り原子力施設に反対していく。田布施町長:イメージが低下し移住定住が進まなくなる。現時点でメリットはない、国や中国電力からも具体的な説明がなく、近隣市町の首長は対応に苦慮している、安全性の議論が尽くされた上で地域活性化策が示されるべきであり順序が逆で非常に残念だ。平生町長:将来にわたり町づくりに大きな影響があると危惧する、周辺自治体や住民にとっても深刻な問題で、子育てや移住定住・教育の施策に影響は避けられない。周防大島町長:パブリックコメントやアンケートなどで広く意見を集め、町の意思としての形につなげたい。 これらの不安に対して西上関町長は国や中国電力が説明すべきだ、とコメントしている。 ●中国新聞が10月に実施した山口県19自治体首長アンケート 中国電力が原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設を山口県上関町で検討していることを巡り、山口県内の全19市町トップに賛否を尋ねたところ、「どちらでもない」「分からない」が9割を占め、「賛成」は上関町だけだった。「どちらかというと反対」は岩国市のみで「農水産業や観光、移住への影響を懸念」「電 力会社の説明が不足」「国の説明が不足」を理由に選んだ。 「どちらかというと賛成」「反対」とした市町はなかった。 (中国新聞  2023.10.22) https://news.yahoo.co.jp/articles/a6595964738bd1c36ea50c5b27a78af96f97a4bb

p6

●山口県知事のこの間の主な発言 ・(原発)本体施設がありながら、別の(原発から持ち込まれた)使用済み核燃料が同じエリアに存在する場所は、日本中どこにもない。負担として非常に過大。 ・2001年に当時の二井関成知事が上関原発の建設計画に条件付きで同意した際、国に出した意見で「使用済燃料の貯蔵・管理について、発電所内での新たな貯蔵施設にたよらないで済むよう、また、発電所内での貯蔵管理が長期にわたらないよう、適切な対策を講じること」を求めた。この知事意見は今でも維持されており、そうした立場に立つべきものと思っている。(朝日新聞2023.12.27) ・22年前、上関原発の建設計画をめぐって、当時の知事が国に示した、使用済み核燃料を新たな施設で長期にわたって保管することは望ましくないとした「知事意見」の基本的な考え方を踏襲する。 ・原発本体と中間貯蔵施設が同時に同じエリアに存在することは過大な負担。今後、中国電力に確認が必要な大きな論点になる。(NHK 2023.12.26) https://www3.nhk.or.jp/1news/yamaguchi/20231226/4060019027.html ・上関原発がありながら、別に中間貯蔵施設のように他のところの使用済み核燃料を受 け入れる施設は全国にない。これは大きな負担。中電が具体的な計画を出した段階で中電に考え方を確認しなければいけない大きな論点だ。 ・上関原発を巡って2001年に当時の二井関成知事が建設計画に同意を表明した際、使用済み核燃料の貯蔵・管理を発電所内での新たな貯蔵施設に頼らず、長期にわたらない対策などを国に求めた知事意見を踏襲する考えも示した。中間貯蔵施設についても知事意見を踏まえ整理する必要がある。(中国新聞2023.12.26) ・使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、「現時点では賛成も反対もない」と中立の立場を強調した。(日経新聞 2023.11.8) ・中国電力による建設に向けた調査に伴って上関町と県が受け取れる国の交付金について「県が申請するとか活用するとかは考えていない」。(朝日新聞 2023.9.14) ■関電のための中間貯蔵施設か 中電が使用済み核燃料中間貯蔵施設建設のための調査を関電と共同で行うと表明したのは8月2日のことですが、中間貯蔵施設の必要度は中電よりも関電の方がはるかに上回っています。 関電の原発サイト内の使用済み核燃料保管プールの8割以上が既に埋まっており、かつ関電は地元福井県から使用済み核燃料を県外に搬出するよう求められ続けているからです。 中電は使用済み核燃料の貯蔵能力に余裕があり、関電ほど切羽詰まっていません。 そのため、関電のための中間貯蔵施設となる可能性が濃厚です。 「なぜ関電の核のゴミを山口県に持ち込むのか」について、現在まではっきりとした説明は行われていません。

p7

●岩国市の福田市長は 「 施設が建設された場合、主に関電の使用済み核燃料が持ち込まれるとの認識を示した」と報道されています。(読売新聞2023.12.13) https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20231212-OYTNT50154/  柳井市の井原市長は、「中国電力さん以外の電力会社のものがこちらにというところについては根強い不信感があると(中電に)お伝えした」、田布施町の東町長は「関電の使用済み核燃料について非常に強い疑問を住民が持っている」と語っています。(朝日新聞 2023.12.2) https://www.asahi.com/articles/ASRD16W49RD1TZNB001.html ■60年後、原子力は古ぼけた技術であり施設となるのではないか 中電は中間貯蔵施設の建設には10年ほどの時間がかかると表明しています。竣工から50年間使用済み核燃料を保管しつづけたとして、その時点で搬出先が確保されるのかはなはだ疑問です。 なにより、その時点で原子力は古ぼけた技術であり、中間貯蔵施設は迷惑遺物となってし まう恐れがぬぐえません。 以上