2021年8月25日水曜日

「“奇跡の海”を未来の子供たちに!!」 高島美登里さん(上関の自然を守る会 共同代表)

2021年7月4日に当ネットが開催しました、「緊急オンラインリレートーク 上関原発お断り! 海上ボーリング調査の中止を求める!!」での、高島美登里さん(上関の自然を守る会 共同代表)のトークの書き起こしを、高島さんから了解いただき、掲載いたします。トーク全体の録画は https://youtu.be/5AsuKNwbjjo にございます。


“奇跡の海”を未来の子供たちに!!

高島美登里さん(上関の自然を守る会 共同代表)


瀬戸内海で失われた遺伝子のセットがそっくり残っている場所 
 6月29日に海上ボーリング調査が始まるということで、「上関の自然を守る会」では26、27日に「田ノ浦生き物見つけ隊」を開催しました。万一に備えて田ノ浦の自然を記録し発信しておこうというものです。3歳のお子さんを含め32名の参加がありました。

 29日から7月1日まで、私たちも田ノ浦に座り込んだのですが、景色は一変し物々しい雰囲気に包まれ本当に悲しい気持ちになりました。

 私たちは上関を奇跡的に残された海、そして珍しい生き物がいっぱいいる海ということで「奇跡の海」と呼んでいます。そして、上関全体の中でも田ノ浦は、ホットスポットというべき特別な場所です。瀬戸内海で失われた遺伝子のセットがそっくり残っている場所であり、ここを潰そうとするのかと、非常に憤りを感じています。

ヒガシナメクジウオとカサシャミセン
 今回のボーリング調査で、特に危機的な状況に瀕する生き物をあげると、まず絶滅危惧II類のヒガシナメクジウオ。1999年にはまだ、水産庁の危急種という程度でした。ですが、この20年で変わりました。中国電力がボーリング調査を始めようとした2019年に生息状況を調査したところ、ボーリング調査地点で9個体のナメクジウオが見つかりました。私たちもこの全域調査まで、調査地点の密度が高いことを知らなかったので驚きました。ナメクジウオというのは砂通しが良くて、砂が細かすぎてもいけないし、粗すぎてもいけないというとてもナーバスな環境に育つ生き物です。そこで、私たちは中国電力に警告を発しました。

 次に、カサシャミセン。2億年前から生きている、貝よりもっと原始的な生き物です。岩に張り付いて足を動かしながら、その間に入ってくるプランクトンを食べて生きています。ですから、水の濁りに非常に弱いのです。実際、2005年に中国電力が行ったボーリング調査を行なったときには、コンクリートが割れて濁水が流れ出ました。その後、私たちが調査をするとたくさんの殻が見つかったのです。砂の上の濁りで、岩に張り付くことができなくなって生きられなくなったということになります。あと、調査予定地から近い鼻繰島では、ミサゴやクロサギといった非常に珍しい鳥たちが生活しています。国の天然記念物であるカラスバトの鳴き声も、一年中聞こえています。ボーリング調査の騒音は、彼らの生息を脅かします。

国は中国電力に調査を要請もしていなければ、法的根拠もないと言っている
 中国電力は、環境アセスメントで2001年に当時の通産大臣から許可を得たからよいといいますが、これは欠陥だらけです。中国電力が環境アセスメントを出してから、2か月後に新しい法律ができて、調査項目などがより厳しくなっています。それを知っていて中国電力は、法律ができる前にそれらを逃れるため、環境アセスメントを出したのです。結果、希少生物の存在を見落としているし、見ようとしていません。

 上関原発計画の中止は、そんな今が逆にチャンスだと思います。まず、エネルギー基本計画に新増設を明記させないこと。6月に国会議員と資源エネルギー庁、原子力規制委員会、環境省が同席のオンラインヒアリングを行いました。そのとき、中国電力が言う重要電源開発地点指定、それに基づくボーリング調査というのは、国としては要請もしていないし、法的根拠もないという説明がありました。原発計画は白紙に戻し、やり直す時期に来ていると思います。 

 原発計画がなくなったときの街づくりをどうするのか。私たちは、「自然で飯が食える」仕組みを目に見えるかたちにするため、魚の産直や、生物の調査や観察会、自然体験プログラムを行っています。

 カンムリウミスズメは、日本固有種といえるもので、アメリカやカナダの研究者もやってきます。上関は唯一、一年中その姿が見られる場所です。

 「“奇跡の海”を未来の子供たちに!!」ということで、ともにがんばりたいと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿