2024年9月9日月曜日

国会ニュースvol. 28、2024年8月20日号を修正しました。

先日公開した、国会ニュースvol. 28、2024年8月20日号ですが、一カ所、暦年に間違いがありました。環境省から「生物多様性の観点から重要度の高い海域」の沿岸域区分の一つ「長島・祝島周辺」として抽出されたのは、2014年でした。新しい版の pdf は https://drive.google.com/file/d/1USJg6Cnf_zszC1WWBbcl7MofLAMFULp9/view?usp=sharing にございますので、ぜひご利用ください。

「生物多様性国家戦略」を反故にする使用済み核燃料中間貯蔵施設計画 2024年4月23日、中国電力は山口県上関町長島の一画でボーリング調査を開始しました。これは上関町が2023年8月、中国電力からの提案——関西電力と共同で利用する使用済み核燃料中間貯蔵施設(以後中間貯蔵施設)の立地可能性調査——を受け入れたことによるもので、調査は約半年の予定とのことです。中間貯蔵施設建設計画については上関町内でも反対する人が半数を占め、周辺自治体でも基地を抱える岩国市をはじめ慎重さを求める意見や不安の声が多くあがっています。 計画地は生物多様性の源 今回焦点となっているのは中間貯蔵施設建設計画ですが、中国電力は、1982年に浮上していまだ建設できていない上関原発計画についても「今後も必要」と繰り返し述べています。しかし、上関原発計画地は、「上関の自然を守る会」の長年の調査により生物多様性のホットスポットであることが確認されています。その環境を生み出す母体となるのが中間貯蔵施設建設計画地のある長島の緑深い森です。 中間貯蔵施設をつくるためには広く平坦な場所と大きな港 湾を必要とするため、山が削られ海の埋め立てが行われることは必至で、生物多様性の喪失が懸念されます。 瀬戸内海は宝の海 中国電力が進めようとする原発と中間貯蔵施設建設計画地は、瀬戸内海の西側、黒潮が出入りする正面に当たります。外海との潮の出入り、灘と瀬が連続的に続くことから生じる潮の上下動といったダイナミックな自然の営みにより瀬戸内海は“日本の食糧庫”ともいえる魚種豊かな海となっています。海を埋め立てることは海を弱らせることに他なりません。また、もし中間貯蔵施設が建設され万一のことがあったら、閉鎖性水域の瀬戸内海は甚大なダメージを受けることでしょう。 直近の8月8日、日向灘でM7.1の地震が起き、南海トラフ地震との関連も懸念されています。 上関の海は国の保護制度のもとにある 今、地球は「沸騰化」というほどの気候変動と生物多様性の危機に直面しています。こうした地球規模の危機を回避するため、各国が国際的な気候変動枠組み条約や生物多様性条約などに基づき努力を続けています。上関周辺の海は、その一環として2011年海洋保護区として生物多様性条約事務局に登録され、2014年環境省による「生物多様性の観点から重要度の高い海域」の沿岸域区分の一つ「長島・祝島周辺」として抽出されました。中国電力の敷地はこうした海域のただなかにあります。 更に、政府は2023年3月、「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、「陸と海の30%以上を保護区にする」という行動目標を掲げました。この目標を達成するためには中国電力の緑豊かな土地を改変することは許されないはずです。 中間貯蔵施設の建設は原発の新増設にもつながります。私たちは原発のない、核汚染の心配のない世界を求めます。中国電力と関西電力の共同事業である上関の中間貯蔵施設建設計画には断固反対です。

青森県むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設の現況 上関町が地域振興策のためという理由で立地調査を受け入れた中間貯蔵施設ですが、現在国内で建設されている中間貯蔵施設は、東京電力と日本原電が共同出資している、むつ市にあるリサイクル燃料貯蔵株式会社(RFS)です。青森県の宮下知事は8月に、使用済み核燃料の搬入を認める安全協定をRFSと締結しました。安全協定の締結にあたり県は7月に県内6カ所で住民説明会を、むつ市で2回の市民説明会を開催しました。 そこで出た主な質問は、「使用済み核燃料を50年保管した後はどこへ搬出するのか? 搬出は確約できるのか?」というものでした。返答は、「搬出先は六ヶ所再処理工場です」でしたが、六ヶ所再処理工場は着工から31年たっても完成の目途が無いことを指摘されると、「その頃稼働している再処理工場へ搬出します」と翻しました。また、保管中に放射能漏れなどのトラブルがあった場合はどうするのか?」の質問には、「搬出して点検、その時に協議します」との現実味のない返答でした。 知事は、「齋藤経産大臣の、搬出先として六ヶ所再処理工場を念頭に検討を始めるとの発言により懸念は一転した」と述べていますが、何の保証にもならないことは明白です。しかし、青森県とRFSが安全協定を締結したことにより9月までに東京電力柏崎刈羽原発の使用済み核燃料がRFSに搬入される計画です。 中間貯蔵施設は一般の工場誘致とは異なります。かように重大な問題を孕む中間貯蔵施設の立地調査を、地域住民への丁寧な説明はほとんどないまま上関町長は受け入れました。もしも建設に至る場合、「中間貯蔵」が「永久貯蔵」になるのではないかとの懸念は払しょくされていません。また、搬入されるのは関西電力の使用済み核燃料です。「なぜ山口県に関西電力の核のゴミを持ち込むのか」という声も挙がっています。 中国電力・関西電力、上関町は町民と周辺自治体に対して、中間貯蔵施設のメリット・デメリットを隠すことなく説明する機会を設け議論を深める必要があるはずです。故郷に誇りをもつ、危険な施設と隣り合わせに暮らすことはできないという人々の切実な思いを真摯に受け止めるべきです。 使用済み核燃料中間貯蔵施設に関するオンライントークのYouTube動画 ①瀬戸内の『奇跡の海』に使用済み核燃料中間貯蔵施設?! (ゲスト:安渓遊地/安渓貴子/高島美登里) ②なぜ関電が中間貯蔵施設を上関町に作るのか? (ゲスト:末田一秀) https://youtu.be/-cjgl7n3O28 https://youtu.be/yVqSCLKCtSo  祝島神舞~海を渡る祭り 山口県上関町祝島では今年8年ぶりの神舞が開催されました。神舞は、約1200年前京都の石清水八幡宮の御分霊を勧請しての帰途祝島に漂着した大分県国東市国見町伊美の人たちを、祝島の住人が厚くもてなしたことをきっかけとして始まりました。伊美の人たちから荒神をまつることと農耕を教わった祝島の人たちは、そのお礼として毎年伊美別宮社に「お種戻し」に参拝し、4~5年ごとに伊美別宮社から神職や里楽師の皆さんを迎えて感謝の祭事、神舞を行うようになりました。(参照:山口県文書館HP) 現在祝島の人口は約270人、その中で実際に動ける人はそう多くはありませんが、先人の残してくれた文化遺産を後世に伝えたいという思いで開催を決めたとのことです。一方の伊美でもやはり高齢化が進み後継者(里楽師)の育成が課題となっているそうです。そうした状況のもと、従来は5日間だった開催期間が3日に短縮され、仮神殿は小学校の体育館に作られました。海上パレードも小規模になりましたが、祝島と伊美の人たちとの交流を改めて感じさせられるものでした。原発計画のためかつて二度の中止を余儀なくされながら神舞を復活させ、更に後世に伝えるために尽力する祝島の人たちの心意気を応援したいと思います。


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